知っているようで知らない食事の時間のおはなし

知っているようで知らない食事の時間のおはなし

時間栄養学とは

 現代の暮らしでは、インターネット・スマートフォンやLEDの普及、24時間営業店舗の増大による光環境の変化、昼夜を問わず働き続ける24時間社会などにより、昼夜のメリハリのない不規則な生活や夜型生活を送る人が多く、食事時間の乱れなどに起因する生活習慣病も増えてきました。同じ食事をしても、食べる時刻や速度、順番によって栄養学的効果が変わってきます。そこで注目されているのが、「何をどれだけ食べるのか」に加えて「いつ食べるのか」という時間的視点を考慮した「時間栄養学」です。今回は、この時間栄養学の観点からお伝えしていきます。

体内時計と食事の関係

 「体内時計」とは、体内の時間軸を調整するシステムです。私たちの体の中には時間のリズムを刻むメカニズムがあり、1日単位で調整しています。
 体内時計は、大きく2種類あり、脳の「視交叉上核(しこうさじょうかく)」と呼ばれる部分に「主(親)時計」、内蔵や血液などの末梢組織には、それぞれ個別に動く「副(子)時計」が機能しています。
 私たちの体内時計は、1日24時間より少し長い周期で動いています。これを1日24時間の周期に合わせるために、「光」と「食事」の刺激で体内時計を日々リセットしています。脳にある「主時計」は、目(網膜)を通して入ってきた朝の「光」を受け、朝だと認識するとリセットされて時計が動き出します。それに対し、臓器などにある「副時計」は、明暗に関係なく「朝食」によってリセットされて時計が動き出しているのです。
 主時計と副時計は、どちらか片方だけが調整され、それぞれがズレてしまうことも考えられます。体内時計のズレが長期間続くと、睡眠障害、うつ病、肥満、糖尿病などの代謝障害や、免疫・アレルギー疾患、さらにがんの発症にもつながるといわれています。つまり、主時計と副時計の両方の調整が健康維持に重要なのです。

時間栄養学による効果的な食事のとり方

《朝食》

◆起床後1時間以内に食べましょう!
体内時計をきちんとリセットするためにも、朝起きて日光を浴びたら、出来るだけ早く朝食を摂り、主時計と副時計のズレを小さくしていくことが大切です。
◆炭水化物(糖質)とたんぱく質を中心に野菜も取り入れたバランスの良い食事を心がけましょう!
炭水化物である穀類のでんぷんは、時計遺伝子を動かします。また、糖質摂取による血糖上昇は、8~20時までは1日の平均値より低く、20時以降は高くなり、血糖が脂肪にかわりやすいです。炭水化物や果物は昼間のエネルギーとして消費され、夜に比べると脂肪として蓄積されにくいため、朝にしっかり食べましょう。また、身体を作るもととなるたんぱく質は、時計遺伝子や筋肉を作り出すものです。さらに、身体の調子を整えるビタミンやミネラルも欠かせません。基本的にはごはんやパンの主食、肉や魚の主菜、野菜やきのこなどの副菜、汁物を組み合わせて食べましょう!

《昼食》

◆しっかりエネルギーチャージ!!
揚げ物や炒め物など脂質の多いメニュー、ラーメンやパスタなどの糖質が多いメニューを食べたいときは、夜に食べるよりも脂肪が蓄積されにくい時間帯の昼に食べるようにしましょう!
◆ビタミンB12が吸収されやすい時間帯です!
ビタミンB12は、赤血球の形成に関与し、神経細胞の機能維持に働く栄養素です。欠乏症には、悪性貧血があります。この時間帯にビタミンB12を多く含む、シジミやあさりといった貝類、牛・豚・鶏のレバーを食べれば、効果的にビタミンB12 を体内に摂り入れることが出来ます。

《夕食》

◆就寝時間の2時間前までに済ませましょう!
時計遺伝子を構成する因子のひとつであるBMAL1(ビーマルワン)というタンパク質は、脂肪の合成を促進する働きがあり、22時~午前2時に増える傾向があることが分かっています。この時間に胃腸に食べ物がたくさんあると、食べたエネルギーのほとんどが脂肪として取り込まれてしまいます。そのため、遅くとも21時までには夕食を終え、以後の夜食は控えましょう。
◆夕食が21時以降になる場合は、17~18時頃に軽い食事(分食)を摂りましょう!
授業やサークル活動、アルバイト、仕事などで夕食の時間が遅くなってしまうこともあると思います。その場合は、夕食を2回に分けて食べる「分食」をオススメします。16~18時頃におにぎり・サンドイッチのような主食、帰宅後の遅い時間には野菜や低脂肪のもの、具だくさんの汁物などがオススメです。
◆カルシウムが吸収されやすい時間帯です!
カルシウムは、歯や骨の主成分になり、神経伝達や筋肉の収縮を正常に保ち、血液の凝固に関与する栄養素です。欠乏症には、骨・歯の発育不全、骨粗鬆症があります。カルシウムが体内に蓄積されるのは夕方以降です。そのため、夕食でカルシウムを豊富に含む食品(牛乳、乳製品、小魚、大豆製品、野菜類、海藻類)を食べることは、骨粗鬆症の予防につながる可能性があります。

今回は、夕食が夜遅くになってしまうという方にオススメのレシピを紹介します!

ミネストローネ (調理時間30分)

材料(2人前)

  • 玉ねぎ  1/4個
  • キャベツ  1枚(40g)
  • にんじん  1/3本
  • ミックスビーンズ  100g
  • にんにく  1片
  • オリーブ油(又はサラダ油) 大さじ1
  • ✩トマト水煮缶  1/2缶(200g)
  • ✩固形コンソメ  1/2個
  • ✩水  400ml
  • パセリのみじん切り  少々
  • 塩、こしょう  適量

作り方

①玉ねぎ、キャベツ、にんじんは1cm角に切る。にんにくはみじん切りにしておく。

②鍋にオリーブ油とにんにくを入れて火にかけ、玉ねぎ、キャベツ、にんじん、ミックスビーンズを加えて強火でサッと炒める。

③✩を加えて中火で10分ほど煮て、塩・こしょうで味を調える。

④器に盛り、パセリを散らす。

〘 調理上のポイント 〙
◎ホールトマトを使用する場合は、潰してから鍋に入れる。

〘 栄養のポイント 〙
◎肉やいも類を使用していないので、低糖質、低脂肪で太りにくい!
◎大豆は食物繊維を多く含み、腸内環境を調える!
◎暖かいスープで体を温めることで、快適な睡眠がとれる!
◎この夕食の食べ方→夜遅くなる場合はこれに加えて16〜18時頃に主食系のものを追加して食べましょう!



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